Before you go up the next mountain, first you have to climb down the mountain that you are.
ロンドンビジネススクール(LBS)時代、Biographyのクラスの教授に言われた言葉。
LBSでは普通のMBAではなく、会社が授業料を出してくれるEMBA(Executive MBA)でもなく、会社を辞めた中年のエグゼクティブが自腹を切って入るSloan Mastersというコースにいたので、クラスの平均年齢は高いし、彼らの生活水準もかなり高かった。お城を持っていて仏大統領選で負けてSloanに来た人もいたし、英国海軍、空軍の将軍格がいたり、もちろんWall Street企業の重役を退いてきた人も少なからずいた。でも彼らはみんな、「今までいた山を下りて、次の山に登る」ためにSloanに来た連中だった。
そんなクラスに向かって、教授は「山の頂上から次の山の頂上には飛び移れない。一つの山の頂上にいるんなら、次の山の頂上に行くためにはいったん峰を降りなきゃいけない」。
「そっか。そうだよな。言い得て妙だ、すごいビジュアライズできるし」と思いながらも、自分の体感までには落とし込めながった。そしてその苦しさや大変さなどには思いも及ばなかった。
でも今回は私ではなく、息子の話、なんだ。
昨日大学に戻ったと思ったら、お昼前に"I want to talk to you"のテキスト。母親からはたくさんテキストは行っても、息子がInitiateしてくるテキストは「金送れ」だけなので、こりゃなんかあるな、と身構えた。
成績が悪いのは知っていた。でも「もうほんとに辞める」という。辞めると言い出したのは3回目だ。たぶん本気だろう。というより大学のほうが「もうお願いだからやめて」と言ってきたんだと思う。
「今の大学はママを喜ばせるために入ったし、実際全然面白くないし、だからついていけない。」わかる、最後の言葉が本音だ。
で、「コミュニティカレッジに入って、働きながら自分の本当に行きたい大学を探す」オーケー。そんな例は枚挙にいとまがないし、Westchester Community Collegeで1年頑張って成績上げて、SUNYやSyracuse大学に入る子は結構いる。
でもね、とり(息子の名前)。問題は、山を下りることだよ。
リスクをとるってことだから。山を下りるってことは。
今いる山で頑張るほうが楽なことが多い。山を下りて、次の山を目指すのは、結構大変だ。混乱もあるだろうし、山を見失うこともある。山を上ることなんかついぞ忘れて、ふもとで遊び惚ける輩もたくさんいる。そんなのと一緒に遊び始めたら、もう一つ山を下ることになるんだ。
お前、わかってる??
うん、わかってる。
簡単なほうに流れると、人間戻ってくるの大変なんだからね。
うん、わかってる。
{ほんとか~?!}
でも彼もあと1カ月で19歳だ。悩んだ末の決断だろう。中学までは学年のトップクラスだったのに、ここまで落ちた自分自身が嫌いで逃げ場がなくなって、すべてをゼロに直して出直そう、と決めたことだろう。
背水の陣だ、私はそう感じた。
あるいは彼に言わせれば、ゲームのリセット。
何もなくなったら、そこから這い上がるしかない。
自分を嫌いになったら、どうやったらまた好きになれるか考えるしかない。
とり、それが一番大事だよ。自分のことを好きでなくなったらすごく辛いんだ。
自分は結構すごいな、と思っているときは幸せでしょ。
その「結構すごいんだ、自分は」の山に戻るためには、やることやるしかないよね。
大学が「お願いだからやめて」と言っているのにとどまるのはできないし。
次の低い山から始めれば。
大丈夫、その間にいろんなことを学ぶと思う。やり直しは絶対きくから。特にアメリカだったら大丈夫。(ははは)
ママも市民権取るからね~。一緒にやりなおし組に応援してくれるアメリカでがんばろ。
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